はじめに
95年夏から96年にかけてSingaporeへ1ヶ月の滞在を含め三度程出張する機会があり、休日に路線バスに乗車したところ、大いに感銘を受け、なんとかSingaporeのバスの素晴らしさを伝えたいと思い、その印象をまとめて見ることにしました。ここでこの本の趣旨をはっきりさせておくと、海外旅行でSingaporeを訪れた人が普通の観光に飽きた時、またはもの足りなりないときに、自由にSingaporeのバスが乗りこなせるような通になるためのガイド書となるものです。またSingaporeのバスは日本に比べていろいろな意味でかなり進んでいます。単なるマニアのバスレポートとしてではなく、一般の方でもその先進性を理解していただけたらと思って書いたつもりです。

シンガポールの歴史
 シンガポールはマレー半島の南端に位置する淡路島ほどの大きさの島国です。7世紀ごろから天然の良港として知られ、19世紀には東洋貿易の中継点として発展し、イギリス植民地時代、日本軍による占領時代を経て、1959年に独立し今日に至っています。人種構成は華僑・マレー人・欧米系・その他と多民族でなりたっています。独立後の初代の首相であるリークカウユーは大胆な経済政策を展開し、わずか20余年でシンガポールを有数の経済国に急成長させました。今や高度経済成長期は終わり、新たな発展段階にあります。すでにシンガポールをリードする世代は、欧米型生活意識を身につけた「シンガポール人」であり、今後この高度な多民族国家をどのように導いていくのか注目されています。

シンガポールという国
 今回の長期滞在で、もともと漠として持っていた私のシンガポールの印象が少し変わりました。これからは私の独断であることをお断りしますが、ひとことで言うとシンガポールは高度に統制された社会主義国家(管理国家)であると思われることです。よく知られるように、世界有数の自由貿易港であり、世界の金融機関の集まる大都市で、資本主義の模範となる国ではありますが、政府の圧力が、表面上は解りにくいものの、社会のあちこちに見え隠れしています。具体的にいうと、何事にも詳細に罰金制度があること、犯罪に対する刑罰が中世的な見せしめ的であること、夜警国家を標傍しながら秘密警察の臭いを感じること、出版・表現の自由に対する制限が常識以上に厳しいと感じること、一党政治(野党が事実上存在しない)で政策に対する国民の批判が反映されにくい(国民を政治に無関心にさせる)点が考えられます。しかし民衆の政治に対する欲求は各種の政策・施策により巧妙に発散され、コントロールされています。これも具体的に言えば、国による積極的な住宅供給に支えられた極めて高い持家率、外国企業の誘致をすることで確保される雇用環境、超近代的な都市計画に基づいて作られた都市整備、及びその維持があげられます。要すれば赤道直下にある社会主義者の理想とする国家というところでしょうか。
 さて、少し話がそれましたが、シンガポールの交通システムは、その近代的な都市計画に基づいて整備されており、そのレベルは世界有数の高度なものといってよいと思います。まずシンガポールのバス以外の交通について説明していきます。

空港
まず空港はシンガポール中心部から車でわずか20分のところにチャンギ空港があり、世界でも有数のハブ空港で、機能的な空港としてよく知られています。

地下鉄
次に地下鉄はMRT(The Singapore Mass Rapid Transit)と呼ばれ、島の東西・南北を機能的に連絡しています。特徴を簡単にいうと、
・豪華かつ清潔な駅施設
・色分けされ、わかりやすい案内表示
・2線が交わる駅では、どの乗り換えでも、同一ホームでの乗換ができる
・車内・地下駅の冷房施設の完備
・自動改札
・地下ホームの仕切りドア(電車のドアと同時に開き、ホームからの転落防止)
・切符はテレホンカード大の繰り返し使用可能な磁気券
・バスと共通利用できるのTransitLink Card(ストアードカード後述)
などで、現在考えられる最新のシステムとなっています。

自動車
 一般道路はほとんど片側2車線以上の規格であり、狭い島ながらハイウエイも縦横に完備されています(無料)。よく知られるように都心部(Restrict Zone)への進入は許可制になっており、あらかじめステッカーを購入し、車の窓に張らねばなりません。Restrict Zoneの入口には警官のいる小さなボックスがあり、そのステッカーだけを見張っています。その場で停止を命じられるわけではなく、後日切符と罰金の振込票が自宅に送られてきます。駐車場は比較的整備されており、駐車料金は日本に比べれば格安です。駐車料金は事前に購入したチケットを車内のダッシュボードの上におくだけで、入庫出庫時に料金精算することがありません。もちろんチケットを置かずに車を離れると、罰金と相成ります。自動車の所有にはかなりの経済的制限が設けられ、自動車台数の増加をおさえています。その制限とは購入時のコストで、関税と特別な税金の為、目を剥くほど高価です。例えばトヨタのカローラの5年落ちの中古で300万円ぐらいします。

タクシー
タクシーはシャワー(急な降雨)の時を除けば容易につかまりますし、料金は感覚的には日本の4分の1以下です。もちろんボラれたりすることもなく、チップも不要です。いまだに3世代前のコロナが主体で不思議な気がしますが、最近やっと日産のクルー(商用車名Comfort)が走り出しました。余談ですが、Singaporeの最大手のタクシー会社は同じComfortと言う名前です。

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