| 野球は最後までわからない
同じページに「エキサイティングベースボール」というプロ野球観戦の拙文がありますが、ここはその続きです。エキサイティングベースボールで書いたとおり、8月23日の日本ハム−近鉄戦は、近鉄ファンの私にとっては、最高の内容で、優勝の可能性を感じました。そこで、9月23日の同カードの東京ドーム最終戦のチケットを手配し、首位攻防の天王山になることを、楽しみにしていたのです。8月から9月にかけて日本ハム、近鉄とも一進一退が続く一方、3位の西武が大方の予想通り、首位戦線に加わったほか、4位のダイエーまでも絡みだし、首位から4位までのゲーム差が2ゲームという、近年まれな僅差でのペナントレースとなっています。 今日はダメか 舞台は再び、東京ドーム。日本ハム−近鉄最終戦である。 前日の同カードは、日本ハムの先発投手の不調で、近鉄の完勝だった。今日勝てば近鉄首位日本ハムに1ゲームと詰め寄れる。西武の残り試合が圧倒的に多いため試合数の少ない日本ハム、近鉄、ダイエーの劣勢は免れないが、ともかく首位に近づいておく必要があり、近鉄としては負けられない試合である。もちろん日本ハムにとっても事情は同じだ。 一回表、日本ハム先発ピッチャーの関根の立ち上がりがよく、近鉄打線は歯が立たなかった。いやな予感がするなか、近鉄の先発エース岡本は初回から連打を浴び、2死1、2塁になったところで、ウイルソンが岡本のフォークをいとも簡単に右翼外野席に叩き込んだ。敵ながら理想的な攻撃であった。いきなり3点を取られ意気消沈した(3−0)。その後も近鉄の攻撃は、関根を全く攻めきれず、凡退ばかりで0行進が続いた。これでは今日は全くだめだなーと、あきらめムードになった。岡本は不安定なまま、4回に一人ランナーおいて、キャッチャーの田口が2号ホームラン。2点追加、5−0の5点差。この直後、オーロラビジョンに西武対オリックスの途中経過が表示され、西武劣勢であったため、日本ハムスタンドは大歓声に包まれた。私はもうここで帰りたくなった。妻も退屈そうにしてきたので、「帰りたい」と言い出したら、従おうと思っていた。近鉄側のお客さんも相当席を立つ人が目立って来た。 何かが閃く しかしその次の近鉄の攻撃、5回の先頭のローズのバッターボックスの時に、何か脳裏に閃くものがあった。どうして閃いたのかいまだによくわからない。冷静に分析してみると、5点のリードで日本ハムサイドは「今日は勝った」という雰囲気で盛り上がっていたところに、日本ハムの野手の交代で、なんとなく一瞬の隙があったように感じられたからだ。またローズは前打席で一発を狙っている雰囲気があったので、この隙を突いて来る違いないと思ったからだ。案の上、関根の初球をライナーで日本ハム側スタンドに叩き込んだ。なんとも間の悪いホームランだった。両サイドともシーンとしてしまい、「近鉄ファンよ!、もっと声援しろ」と言いたかった。真剣に観戦している人には、この隙とローズの意図は予感できたはずだ。一点返して5−1。 私はこれで今日は行けるかもしれないと思いはじめた。5回の裏の日本ハムの攻撃から、近鉄の投手は2番手のレフトウィッチに交代。レフトウィッチをはじめて見たが外人ながら制球がうまく、とてもいいピッッチャーだ。5回から7回まで2安打5三振無得点とぴしゃりと抑えた。次の近鉄のチャンスは8回の攻撃だった。捕手とレフトを兼務している渋い磯部がバッターボックスに立った瞬間、また閃いた。この時の閃いた理由は、磯部がネキストバッターズサークルにいた時の素振りだった。縦に鋭く何度も素振りをしており、球威の弱りつつあった関根から一発打てそうな気がしたのだ。今度は妻に予言しておこうと思い、「磯部は打つよ」と言った。予言通り、またもや日本ハムスタンドへ、ソロホーマー。これで5−2。だんだん日本ハムスタンドはいやな予感がして来たに違いない。追われる者には避けることのできない恐怖感というヤツだ。特に日本ハムは首位独走からの転落の過程で何度もその挫折を味わっているから、また今日も同じ事になってしまうのかという予感がして来たはずだ。しかしまだ3点差だ。 ここで、私は「野球は最後までわからない」というタイトルの内容を、このホームページに書こうと思った。以前の記述(エキサイティングベースボール)で、この試合の切符を手に入れると宣言した以上、ホームページを見てくれた人が、結局今日の試合がどうなったのか気にしないかな?(誰も気にしない?)と、思ったのでからである。ボロ負けだったら、どういうタイトルにしようか迷っただろう。しかし、ここまで我慢して見ていて、かならず良い場面というのはやってくることがわかったので、それを伝えたいと思って、このまま5−2で負けても、このタイトル「野球は最後までわからない」にしようと思った訳だ。 ところがこのタイトル以上に終盤大どんでん返しが待っていたのだ。まさに事実は小説より奇なり。 9回4点大逆転 5−2で迎えた9回表。近鉄最後の攻撃である。日本ハムのピッチャーは、抑えの切り札シュールストームに交代した。シュールストームは、7勝8セーブ、過去9試合無安打の日本ハム抑えの守護神だ。ところがこのシュールストームが乱調で、近鉄に神風が吹いた。吉田が四球で出た後、ローズが右中間タイムリーで一人生還し、一点を返す(5−3)。その後なお2死1、3塁のチャンスにまた磯部が登場。期待に応えて右翼線2塁打を放ち、2点追加で同点に(5−5)。最後水口がレフトにヒットを放ち、磯部が2塁から生還、勝ち越した(5−6)。新聞記事的に淡々を事実を書いたが、この間の近鉄の点を奪取する気迫は並大抵ではなかった。日本ハムファンから見るとあれよあれよという間のことだったに違いないだろうが、近鉄側としては一球一球が緊張の連続で,何とかヒットをと祈り、その願いがバットに乗り移り、近鉄の選手がダイヤモンドを駆け抜けるのに、どれだけ長い時間がかかった事だろう。 ここまでくれば9回の裏は、近鉄の守護神大塚の登場だ。 一点差ながら、全く負ける気がしない余裕の投球であった。一度投球しようとして球を後ろにポロっと落とすハプニングがあった。たぶんプロ野球珍プレイ大賞にノミネートされるであろう。最後は金子から三振を奪ってゲームセット。大塚は今日で34セーブ目で、江夏・森の持つパリーグタイ記録に並んだ。今日の近鉄の勝ち投手は入来である。入来は8回ツーアウトで出て来て5球で4勝目を勝ち取った。今日の中継ぎ陣はレフトウィッチ、西川、入来と3人だったが、3人とも無失点で申し分なかった。近鉄も目立たないながら、いい投手がいるものだ。 3時間35分の熱闘であった。野球は最後までわからない。 近 鉄| 00001014|6 日本ハム| 30020000|5 翌日サンケイスポーツの記事から 今期が終わろうとしたその時、敵地のドームに、神風が吹いた。佐々木監督はあとで、「劇的としか、言いようがないな。吉田がよく四球を選んだ。(野球は)四球からこういうことになる。」と、インタビューに答えた。いまだに残り試合に集中する牛将の凄みにナインが応えた。磯部のコメント「これまでチャンスに打てなかったんでね。でもあきらめない気持ちがいい方に出ました。」と。捕手登録ながら打力を買われて、外野と捕手を兼務。愛称「捕手もどき」がここ一番の強打。最後を決めた水口は代わりの野手がいない事でそのまま打者に立ったものだった。まさに総力戦で勝ち取った一勝だった。 売り子さんあれこれ スタンドではさまざまなものを売りに来る売り子さんがいる。ジュース・ビールの飲料は、もとよりアイスクリーム・弁当の食事までいろいろである。ところが、今日はじめて気が付いたのだが、売り子さんはみんな若い女性なのである。男性は一人もいない。むかしは「ビール、いかがっすっかー!」と若いお兄ちゃんの野太い声が定番であったのに、いまやかわいい女性の声に取って代わられている。さまざまな売り子さんの中でも、花形は何といってもビールの売り子さんである。銘柄はキリン一番絞り、アサヒドライ、エビス、サッポロ黒生、サントリーモルツと一通りあり、接待でも心配がない。(意味が分かりますか?) みんなリックサックスタイルのボンベを背中におぶって、宇宙飛行士のようだ。コスチュームもさまざまで、モルツは野球のユニフォームに似せた短めのパンツスタイルだ。またみんな紙幣を二つに縦折りして指にはさんでいる。その挟んだ紙幣をこれ見よがしに振って見せる。値段は800円。いい値段である。ところで観察していると、売れるビールは銘柄で決まる訳ではないことがわかった。決め手は何か?かわいい売り子さん程良く売れるのだ。左手に紙コップを持っているのでそのコップの残り数で売上がわかる。銘柄的に一番売れるはずのアサヒドライの売り子さんはサーファー系で愛想がない。彼女の紙コップは一向に減らない。一方健闘していたのが素人っぽいてかわいいモルツの売り子さんだった。ビールメーカーは売り子さんを選択できているのか。売り子さんの愛想次第で大きな売上の差になってしまう。世の中厳しいものである。お客にとって、結局ビールの銘柄はあまり関係ないのだろうか。私は買いもしないのにじろじろ観察しまいました、すみません。それにしても観客席の急な階段を何回も上り下りするので、大変な重労働で、全くお疲れ様である。ついでに気が付いたことは、コーラやモナカの売り子さんは、紙コップやモナカを振って客の目を引こうとしている事で、赤ちゃんに向っておもちゃ振っているようで、こちらとしてはあまりいい気がしなかった。 シーズンを終えて 10月11日現在、西武の優勝が決まり、近鉄は5位でシーズンを終えた。ただしである。2位日本ハムから5位近鉄までは1.5ゲーム差しかない。1.5ゲーム差に4チームがひしめくまれに見る混戦だった。 今日、テレビの「きらり」という番組で「パリーグの一番長い日」という特集をやっていた。1988年のシーズンに近鉄があと一歩というところで優勝を逃した試合を克明に振り返ったものである。 そのシーズンは独走西武を近鉄が追いかける格好となっており、近鉄が怒涛の勢いで西武を猛迫していた。そしてロッテとのダブルヘッターの最終戦を「連勝」すれば、近鉄の優勝できるという土壇場の場面だった。ダブルヘッダーの第一試合は近鉄のまさかの逆転で辛くも勝った。ところが、第二試合は終盤8回にロッテに追いつかれて、結局延長10回、時間切れ引き分けとなり、近鉄の優勝は幻となった。当時、試合時間が4時間を超すと、試合の延長しないとするルールがあったのだ。9回には、きわどい判定にロッテが執拗な抗議を行い、貴重な時間を浪費したことが、あとで物議を醸したことを覚えている人も多いと思う。番組では、当時の監督であった仰木監督や阿波野投手、ロッテの有藤監督などが、あたかも昨日の試合のように10年前を振り返っていた。そのダブルヘッダーでの近鉄は一縷の望みにすべてを託す、というような他力本願では全くなく、必ず勝つんだという信念に満ち溢れていた。近鉄のチーム全員が一丸となって突き進む姿を、番組を見てた人は、誰でも(近鉄ファンでなくとも)共感できたと思う。番組の最後は中村正俊のコメントで締めくくられていた。そのコメントとは「近鉄が負けたのは、ただ一つのことだけでした。それは時間との戦いでした。」というものだった。 何故今ごろ、10年前の試合を振り返る必要があるのか、番組の意図が良くわからなかったが、見ている中で思わず今年のシーズンそのままなことに気がついた。シーズン後半の近鉄には勝利を目指す真摯な姿があったと思う。チーム自体が地味な印象で、特に目立つ選手がいる訳でもなかったが、必ずやってやるぞという気概があった。ところが、スポーツ解説者の近鉄の評価は低く、マスコミの報道では近鉄の戦い振りが良く伝わって来なかったし(この点は前回触れた通り)、シーズンの結果としては5位と、記録的にはBクラスと片づけられてしまうことになった。でも球場に行けば、テレビや新聞ではわからない近鉄の(というかプロ野球としての)エキサイティングな姿を見ることができた。 番組の最後で、時間切れ引きわけで、優勝の望みが断ち切られ呆然とした近鉄のナインの姿が映されていた。しかし番組はハッピーエンドで終わる。それは翌年1989年リーグ優勝の胴上げシーンだ。1988年のつらい最終戦があったからこそ、翌年の優勝がやって来たのだろう。 ここまでくれば、番組の意図は明らかだ。 1988→1998、 1989→1999。 来年はきっと優勝、頑張れ近鉄バッファローズ! (以上)
|