エキサイティングベースボール

久しぶりにプロ野球を観戦した。とても新鮮でかつエキサイティングだった。これは近鉄ファンである私にとっては、最高の内容であったことが大きいが、久しぶりにプロ野球の醍醐味を味わえたといって良い。

真木の好投
舞台は東京ドームの日本ハム−近鉄23回戦の1−2位対決である。
この切符を手に入れた一ヶ月前は、首位日本ハムと2位近鉄との間には7.5ゲーム差があった。しかし、近鉄の勢いと日本ハムの打撃不振から何か追いつける感じがしていて、この直接対決で首位攻防になるのではという、微かな期待があった。ところが予想通り、近鉄は5連勝、一方日本ハムは6連敗により、3.5ゲーム差での、直接対決となったわけで、してやったりという気分だ。
初戦・二戦とも近鉄の連勝で、今日で3連勝すればいよいよ0.5ゲーム差になるという試合だった。

愁眉だったのは近鉄真木の一本気な力投であった。
真木投手のことを詳しくは知らかったが、今日見て素晴らしいピッチャーだと思った。これは試合の経過を含め述べて行きたい。1回表、近鉄の攻撃は、先頭の大塚がヒットで出塁、バントで2塁に進むという先取点獲得には理想的なパターンであった。後発が続かなかったが、近鉄にとっては、今日もいけるとう雰囲気になった。ところが、その裏の日本ハムの攻撃での真木の立ち上がりで、このいけるという雰囲気は吹っ飛んだ。真木は速球派で押し捲るタイプだが、どうもコントロールが定まらなかった。先頭の西崎にいきなりソロホームランを浴びた上、そのあと4連続四球で押し出しの一点。速球でツーストライクまで追い込むのだが、結局フォアボールになってしまうのだ。一回とは言え、何故佐々木監督はこのような不調の真木に投げさせ続けるのかが不思議なくらいだった。しかし、かろうじてダブルプレーでスリーアウトとなり、満塁の窮地を脱した。結局一回の裏にソロホーマーと押し出しで2点を与えてしまった。この時点でやはり3連勝は無理かなという気がよぎった。その交代の間に日本ハムサイドから、審判に抗議があった。きわどいプレーや判定はなかったし、何の抗議か良く分からなかったが、かなり執拗だった。

2回以降の真木はコントロールが良くなり、本来の調子を取り戻した。常に速球で押し捲り、三振を奪うようになった。翌日の新聞で判明したのだが、日本ハムの抗議は真木のロージンの付けすぎに対して、だった。ロージンとはピッチャーが投球の際、手に付ける白い粉で、滑り止めの意味がある。これを手や腕に付けすぎだとの抗議だったのだが、日本ハムサイドが何故そんなことに抗議していたのか良く分からないが、新聞が言うようにこれが真木の火を付けたことには間違いない。つまらない抗議で、相手にプレッシャーを与えるどころ逆に、立ち上がりの悪かった真木の調子を上げてしまうことになった。その後、ランナーを出しながらも、要所は締めて追加点を与えなかった。一方攻撃の方はエース金村の好投に抑えられるかと思われたが、3回から得点には至らなかったものの、いい場面が何度か現れ、2点差でも何とか追いつくという気がしてきた。

そして、5回に近鉄の連打で1点を返し、6回クラークのソロホームランでとうとう同点に追いついた。やはり、こういう投手戦での一発は意味があり、爽快だ。一方真木は尻上がりに調子を上げており、速球一本槍の真っ向勝負で小気味よい。真木の真っ向気なところは、投球だけでなく、ランナーを出した時にも表れた。真木は一切走者を気にせず、牽制球は一球も投げなかったのだ。
大詰めの8回表の近鉄の攻撃はいい形でランナーが溜まったが、結局ローズがダブルプレーの凡退。外人選手らしくなく、「申し訳ない」といった感じで、肩を落とし、とぼとぼベンチに引き上げる姿が滑稽でかつ愛らしかった。

落合最後の登場
8回裏も均衡は続き、「延長の場合12回まで行います」とのアナウンス。延長でも勝ちそうな気がするが、さよなら負けだけは見たくないなと思う。9回表の近鉄の攻撃。先頭はあえなく凡退で、やっぱり8回に一点でも入れておくべきだったと後悔する。次の村上は8回裏守備固めに交代で入ったのだが、予想外にも、一発を出してくれた。もう近鉄応援席は大騒ぎ。徐々に追いつめた日本ハムを9回とうとう突き放す痛快の一発だ。金村も良く投げたと思うが、流れからして押されていたことは事実だ。

一点追い越しての9回裏。日本ハムの最後の攻撃で、思わぬエキサイティングな舞台が待っていた。ピッチャーは真木から、抑えの守護神、大塚へ。近鉄の勝ちに行くパターンに、応援団は更に盛り上がる。先頭バッターがヒットで出塁。二塁に進んで一打同点のチャンス。ところが大塚は2アウトまで、日本ハムを追い込んだ。最後に代打が告げられた。代打「落合」。これには、日本ハムはもちろん近鉄サイドからも「オー」という歓声が出た。落合といえば「落合」である。いまや、プロ野球のシーラカンス的な存在であり、今日の試合を見ている限り、日本ハムに落合がいることを忘れていたくらいだ。妻は日本ハムの選手で初めて知っている人がいた、と感激していたが。ワンヒットで同点に追いつく場面だけに、職人落合なら渋いヒットを放つことは十分考えられる。しかし、大塚はプロ野球の超スーパースターに臆することなく、相変わらずの直球勝負で挑んできた。落合も悠々たる間合いを取り、威厳を見せながら、大塚の速球にファールで粘った。一球一球が息を飲む真剣なものとなり、球場全体がなんとも言えない興奮状態に陥って行った。しかし、落合は大振りの三振に終わり、その興奮状態は、近鉄側では大歓声に、日本ハム側では大きな落胆の声に二分された。
ということで2対3で近鉄の勝利となった。あまりにも最後の舞台が突然で、かつ予想外(近鉄ファンながら、落合なら打ってくるに違いない、と思ったから)に終わったので、「ヤッタゼー」というより、「とにかく勝てた〜」という虚脱感を先に感じた。そうこうするうちに、次に最後に落合登場という素晴らしい場面を見ることができたという、満足感がやってきて、最後に、近鉄ファンにはたまらない勝利のプロセスを、振り返れる余裕ができた。そして、1位日本ハムを3タテで破り0.5ゲーム差まで追いつめた近鉄の勝利の喜びを味わうようになったのは、ドームを後にしてからであった。

近  鉄| 000001101|3
日本ハム| 200000000|2

プロ野球はエンターテイメント
今日の試合は両投手の投げ合いに尽きるが、プロ野球を名乗る以上、エンターテイメントの要素、つまり見せ場というものが必要だ。観客全員が喜ぶ場面を設ける必要がある。今日はそれが落合だった。オリックスのイチロー、横浜の佐々木がそれに相当するのだろう。試合内容さえ良ければ無理に見せ場を作らなくとも良いと考えるのが普通かもしれないが、球場に足を運んでもらっている以上不可避なものと思える。そういう意味では一種の芝居とも考えられるが、プロ野球=真剣勝負のプロスポーツと、まじめに考えすぎないで、アメリカのようにエンターテイメントの部分を出して行くべきだと思う。
しかし、今日の落合はそのエンターテイメントの餌食だった。最後の見世物パンダだ。打撃練習をどこまでやっているのかわからないが、最後の場面でいきなり出されてきても試合の流れに乗れる訳もなく、かろうじてファールを2発放っただけで、最後は大きな空振り。大ヒーローも無残な使われかたをするなと、少しかわいそうな気がした。

マスコミ報道の限界
気に入らないのが、テレビの報道だ。帰宅後、ナイターを中継していた民放の解説者は、デーゲームでの近鉄の3連勝のコメントとして、「このまま(近鉄が首位に君臨する)とは考えられないので、むしろおもしろくなってきたのは3位の西武でしょう。優勝経験のある投手陣がいますから」と、端から近鉄の首位奪取を認めようとしないのだ。(ちなみにその時点で西武はオリックスにリードされていた)

他の民放のテレビ中継を見ていると、試合の臨場感が全く違うことに気がついた。球場にいると一球一球に緊迫感があり、息を飲む感じがする。また、投手・監督・打者の気持ちがよくわかる。特に打者は、野球に疎い方の私でも心理状態が分かりやすい。球場で見ているとどんな球でもきっと振ってくるだろうな、という瞬間があることがわかる。

臨場感のほかにも、試合の実態が伝わっていないことが問題である。実は今日の試合を一言でまとめると、真木−金村の投手戦であった。しかし、3本のホームランが映されただけで、両投手の熱闘は一言も語られなかった。最後9回の落合とリリーフの大塚との見せ場も無視された。
その点、翌朝日経のスポーツ面は上記の内容を端的に記しており、テレビよりは正確な描写だった。

球場運営あれこれ
球場の入場者数は厳しいものがあるのだろう。
1位2位決戦の日曜日のデーゲームにもかかわらず、満員なのは外野だけで、内野それも指定席は2ー3割の入りだった。自由席の内野7割程度だったが、まともにチケットを買っている人は半分以下だろう。ほとんどは何かの景品で無償で貰った人だろう。
そこで、日本ハム球団としても指定席の入場者数を増やすために、いろいろ手を尽くしているようだ。指定席券10枚分の価格で12枚がつく回数券とか、1300円の弁当付き指定席券(価格は指定席正規料金)、小学校3年生未満のチビッコファンクラブの募集(キャラクターグッズやアトラクションに優先して参加できる特典がある)などが、繰り返し、オーロラビジョンで宣伝された。
値段の割引と子供で釣る作戦しかないのかという、アイディアの限界を感じた。

しかし、球場のアトラクションは進んできた。主なものとして、試合前の親子キャッチボール(プレーボール直前にグランドでキャッチボールをさせる)・有名若手歌手の始球式(追っかけの女性がきていた)・プリクラ(オーロラビジョンでの親子をズームアップし、試合後でそのままプリクラにしてプレゼントするもの)、指定席にはルーレット方式で指定席番号抽選を、子供にはあらかじめ応募券(1000枚)を配り、ゲーム(3人)絆創膏(300人)を抽選でプレゼントしていた。
昔、今はなき西宮球場では、必ず、地方の名産品(スイカとかお菓子)が当たる抽選券が入場者全員に配られた。今日の試合は子供に偏重していて、入場者には必ず当たる権利があるという意味あいでは、昔の方が平等な気がした。
試合の合間には必ず、オーロラビジョンで座席を写し、球場の臨場感を出していた。
もう一つ球場のアトラクションで考えて欲しいのは、あまりにも地元チーム贔屓過ぎることである。選手の紹介は、ホームチームはビデオ顔や姿を紹介するのに、近鉄は名前だけ。また各チームの応援団は試合直前にエールの交換をするのだが、日本ハムサイドの応援歌のあと、近鉄サイドが自分の応援歌を歌っている最中に球場の方でプログラムを進め、別の音楽を流してしまうといったことがあった。また、近鉄が勝つとヒーローインタビューは、球場内に放送されない。試合後の興奮を味わいたい近鉄ファンとしてはなんとも物足りない。球場の入場者の少なくとも3割以上は相手チームのファンで東京在住の人なのだから、日本ハム球団としても何らかのサービスをすべきではないか。


近鉄と日本ハムの違い
1時間45分前に球場に入った時点で、近鉄が打撃を中心としたをおこなっていた。そこには和気あいあいというか、比較的リラックスしたムードが漂っていて、勢いのあるチームは違うな、と思った。ところがそのあと、日本ハムの練習になると一糸乱れぬ統制されたきびきびとした練習で驚いた。一つ一つの動作に緊張感があふれ、絶対手を抜かない感じがした。裏返せば、監督・コーチに監視されているため、危機感を持って練習に取り組んでいますよ言うことを誇示しているような姿にも見えた。どちらが良いということではないが、必ずしも日本ハムの姿が優勝につながるとは限らないことが、プロたるゆえんである。ここは高校野球とは違うのである。


応援さまざま
外野席が応援席になったのは一体いつの頃からだろうか。昔甲子園へ阪神の試合を見に連れて行ってもらった際には、阪神の応援は内野席で行われていた。面白い応援団長が、最前列のフェンスに登り、応援の都度、花吹雪をバッと撒くのだが、必ず最後は期待させながらも、チョロっと撒いて笑いを誘うギャグあって、印象深い思い出だ。
東京ドームの外野席は狭いので外野席全体が応援席になる。
みんな統制されていて、さまざまな応援歌(シチュエーションや、選手それぞれ)に応じてメガホンを叩いたり、声援を送っている。東京にこんなに近鉄ファンがいるのか(もしくは大阪から出てきているのか)と思うほどで、ちっとも日本ハムに負けていなかった。今日は日曜だからいいが、平日もいつもこの調子応援しているのだろうが。遠征の費用や時間的な都合はどうしているのだろうか。普通のサラリーマンならまず不可能だろうし、そうでなくても家族の了解を得るのは容易でないはずだ。

今回近鉄側の内野自由席に入ったのだが、周りのほとんど人は近鉄ファンではなかった。一回先頭の西崎がソロホーマーを放った際、周りの相当の人が歓声を上げたから、試合が始まってすぐ贋近鉄ファンだとわかってしまった。しかし私の前に座っていた老夫婦は近鉄ファンで、われわれが大声で応援するものだから、後ろを振り向いて「だめねー」とか「ここで頑張らないとね」と同意を求められてきた。お父さんは本当は巨人ファンの様で、近鉄の選手を挙げ、あれは元巨人にいた選手だとか、巨人の選手でいうと誰それに相当するとか、何かと巨人に喩えていた。とにかく見知らぬ人と短い時間でも共感できることはいいことだ。

野球観戦は大人のもの?
こどものころ野球の観戦というのは随分退屈なものだと思っていた。今日初めて、子供が退屈そうにしているのに気が付いた。まず比較的早くから私の後ろに陣取った大学生(らしき)4人組みは全く試合を見ておらず、一回表で、いつ帰ろうか相談を始めた。結局3回裏で吉祥寺に行くとやらでそそくさと帰ってしまった。どうせチケットは自分で買った訳でないから、もともと見る気はなかったのだろうけど。
また通路の反対にいた親子連れ(小学生くらい)もほとんど飲食に夢中で試合は見ていない。やっぱり私も昔そうだったのだななあ、と思った。良く考えれば、野球の試合というのは動きが少なく、特に投手戦の場合、緊迫感を感じるためには選手の心理や、監督の作戦等を推理しながら見るものだけに子供には無理なところがあるのかもしれない。
その点サッカーはわかりやすい。プレーはエンドレスだし、動きが常にあって目を離す暇がない。

(追記)
これを書き上げた8月22日現在、近鉄はこの試合以降5連敗、日本ハムも一進一退で3.5ゲーム差である。一方3位西武は調子を上げ、近鉄に0.5ゲーム差まで追ってきている。テレビ解説者通りの展開で不甲斐ないが、何とか前の調子を取り戻して欲しい。というのも9月23日の日本ハム−近鉄(東京ドーム)の最終戦のチケットを調達してしまったからだ。(以上)

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